ショートフランジはなぜ曲げられない?短い曲げ・曲げ付近の穴変形と対策を解説
板金部品の設計において、「フランジをもう少し短くしたい」「曲げ位置の近くに穴を配置したい」といったケースは少なくありません。
特に、電子機器や産業機器などの小型化・省スペース化が進む中、限られたスペースに収めるため、複雑でコンパクトな形状が求められています。
しかし、図面上では問題のない形状でも、実際の加工では「曲げられない」「穴が変形する」といった問題が発生することがあります。
今回は、板金加工におけるショートフランジの加工限界と、曲げ付近の穴が変形する原因について、技術的な観点から解説します。
1. ショートフランジとは?
ショートフランジとは、板金部品の曲げ部分から端部までの長さ(フランジ長)が短い形状を指します。
一般的な板金の曲げ加工では、プレスブレーキと呼ばれる設備を使用し、上型(パンチ)と下型(Vダイ)で材料を挟み込むことで曲げ形状を作ります。
このとき、材料を下型の両肩で支える必要がありますが、フランジが短すぎるとワークが下型の両肩に乗らず、曲げ加工が難しくなります。
そのため、ショートフランジは通常の曲げ加工では対応できない場合があります。
2. ショートフランジが曲げられない理由
① V幅と最小フランジ長さの関係
プレスブレーキによる一般的なV曲げでは、下型のV幅によって加工可能な最小フランジ長さが変わります。
90°のエアベンディングの場合、最小フランジ長さは一般的に次の式が一つの目安となります。
最小フランジ長さ ≒ V幅 × 0.7
例えば、V幅が8mmの場合、
8mm × 0.7 = 約5.6mm
となり、約5.6mmが最小フランジ長さの目安です。
これより短くなると、材料を下型で十分に支持できず、曲げ角度が安定しなかったり、材料が滑り込んだりする可能性があります。
※上記は一般的な90°のエアベンディングにおける概算です。弊社での実際の加工限界は材質・板厚・曲げR・金型形状・フランジ寸法の測定基準などによって異なりますが
最小フランジ長さ ≒ V幅 × 0.5+α
での対応が可能です。
② 板厚や材質による影響
曲げ加工では、板厚に応じた金型の選定が必要になります。
一般的に板厚が厚くなるほど、大きなV幅が必要となる傾向があり、それに伴って加工可能な最小フランジ長さも大きくなります。
また、ステンレスやアルミニウムなど、材料によって必要な曲げ荷重やスプリングバック(曲げ加工後の角度の戻り)も異なります。
そのため、同じフランジ寸法であっても、材質や板厚によって加工可否が変わる場合があります。
3. 曲げ付近に穴があると、なぜ変形するのか?
ショートフランジと同様に、板金設計で注意したいのが、曲げ位置と穴の距離です。
曲げ加工では、材料の外側には引張応力、内側には圧縮応力が発生します。
曲げ位置の近くに穴がある場合、その穴が曲げによる塑性変形の影響を受け、穴形状や周辺部分に歪みが生じることがあります。
① 丸穴が楕円状に変形する
穴が曲げ部分に近すぎると、曲げ加工時に穴の周辺が引っ張られ、丸穴が楕円状に変形することがあります。
穴径や位置精度が求められる部品では、加工後にボルトやピンが入らないなど、組付け不良につながる可能性があります。
② 穴周辺に歪みが発生する
曲げによる変形は、曲げ線上だけでなく、その周辺にも影響します。
特に穴と曲げ位置の距離が短い場合、穴周辺の材料が不均一に変形し、穴の縁が引っ張られたり、局所的な歪みが発生したりすることがあります。
③ 曲げ位置と穴の距離が重要
穴の変形を抑えるためには、設計段階で曲げ位置から穴までの距離を十分に確保することが重要です。
ただし、必要な距離は板厚・曲げR・材質・穴径などによって異なります。
また、図面上で穴の中心から曲げ位置までの寸法が確保されていても、穴の端部が曲げによる変形領域に入っている場合には注意が必要です。
基本的な考え方としては曲げから穴の端面までの寸法として
2項①のV幅と最小フランジ長さの関係と同じです。
4. ショートフランジや穴変形への対策方法
短いフランジや曲げ付近の穴は、必ずしも製作不可能というわけではありません。
製品形状や要求精度に応じて、加工方法や工程を見直すことで対応できる可能性があります。
① 金型の選定・変更
通常のV曲げで加工が難しい場合、V幅の小さい金型や特殊金型の使用を検討します。
ただし、V幅を小さくすると必要な曲げ荷重が増加するため、材質・板厚・設備能力などを考慮した判断が必要です。
② 穴位置や形状の見直し
曲げ付近の穴が変形する場合、穴と曲げ位置の距離を確保することで改善できる可能性があります。
また、製品の機能に影響しない範囲で、穴形状や曲げ部分に逃がし形状を設ける方法も考えられます。
弊社では曲げ部にスリット穴を設けることをご提案しています。
③ 加工順序の変更
通常は展開状態で穴加工を行ってから曲げるケースが多いですが、穴の変形を避けるため、先に曲げ加工を行い、その後に穴加工を行う方法もあります。
ただし、曲げ後の穴加工には、製品を保持するための治具や工具の干渉など、別の検討事項が生じます。また、工程が増える可能性が高いため費用や製作時間の増加につながります。
④ 別工法による製作検討
通常のプレスブレーキでは対応が難しい場合でも、専用金型や別工法を検討することで、希望する形状を実現できる可能性があります。
製品の用途や必要数量、要求精度に合わせて、最適な加工方法を選択することが重要です。
5. 設計段階で加工可否を確認することが重要
ショートフランジや曲げ付近の穴は、製作段階になって初めて問題が発覚することもあります。
その結果、図面変更や再試作が必要となり、開発スケジュールに影響するケースも考えられます。
こうした問題を防ぐためには、設計段階から加工方法を考慮することが重要です。
特に、以下のような場合は事前の加工可否確認をおすすめします。
- フランジ長さを極力短くしたい
- 曲げ位置の近くに穴を配置する必要がある
- 製品の小型化により設計変更が難しい
- 他社で曲げ加工ができないと言われた
- 試作段階で形状や加工精度を確認したい
6. 短い曲げや加工が難しい板金形状もご相談ください
ショートフランジや曲げ付近の穴変形は、板金加工の基本的な原理を理解することで、設計段階から対策を検討できます。
一方で、製品の機能や組付け条件によっては、簡単に形状を変更できない場合もあります。
ダイマル鈑金工作所では、精密板金加工を中心に、切削加工なども含めた金属加工に対応しています。
通常の曲げ加工では難しい形状についても、材質・板厚・製品形状・要求精度などを確認しながら、加工方法を検討することが可能です。
「この短い曲げは加工できるだろうか?」
「曲げ付近に穴があるが、変形を抑えて製作したい」
「他社で加工が難しいと言われた形状を相談したい」
このようなお悩みがございましたら、ぜひ一度ダイマル鈑金工作所までお問い合わせください。
図面や3Dデータをもとに、製作の可能性を検討いたします。
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